最近、よく相談を受けるのが、顧客管理用のデータは蓄積できているが、それを有効に活用する仕組みができていないというケースです。
こだわりの商品を扱ったところ、急激に売上がのびてきた会社や、時代の流れにあった商品をラインナップに持っており、その商品を売ることに専念してきたような会社が多いようです。
売上を伸ばしていくフェーズにおいては新規顧客の獲得にばかり関心が向きがちです。経営者から現場の担当者まで「今月、何人の新規顧客が獲得できたのか?」に目が向いており、「既存顧客のリピート率や離反率がどのぐらいなのか?」「既存顧客に、もっと買っていただくためには?」「既存顧客の離反率を下げるためには?」といった部分には目が向かないのです。
売上が確実に伸びているフェーズでは、顧客データを積極的に活用しなくても大きな問題はありません。しかし、その後の停滞のタイミングで、必ず既存顧客のリピートが課題となります。今回は、すでにデータを持っているがうまく活用できていない会社において、データを活用する方法を見ていきましょう。
多いのが、顧客管理のソフトは導入済みであっても、データを分析するツールがないケースです。この場合には、まずデータを分析するためのDBソフトを導入します。数十万件程度の購買履歴データであれば、MicrosoftのAccessで十分です。高性能なPCを使用したり、データの持ち方を少々工夫すれば、相当のデータを処理することができます。数百万件単位のデータを対象とする場合は分析・プロモーション管理用のツールの導入も視野に入れることが必要です。
最初の段階は、住所やメールアドレス等の顧客マスター、購買履歴を入れるだけでもよいでしょう。個人情報保護の観点から、購買履歴だけで分析を行い、顧客コードによって顧客管理システムと連動させ、プロモーションを実施しなければならないケースもあります。いずれの場合でも、購買履歴については、全件を大福帳形式にしておけば管理分析がしやすくなります。すべての購買履歴が別々の紙(レコード)に記録されているイメージです。
購買履歴について、最低限必要な項目(フィールド)は顧客コード、購入年月日、購入商品名、購入価格ぐらいです。購入年月日と購入価格だけでも、もっともベーシックな分析であるRFM分析が行えます。
販売の仕方によっては、購入数量や販売価格、商品分類、返品区分等の情報も付加します。その程度の情報でも、クロスバイ(関連商品)提案や、新規顧客獲得商品、リピート商品のリストアップ、LTVの計算など、必要なデータはだいたい導き出すことができます。
この程度の分析であれば、DBソフトの基本的な操作しか必要としません。細かい処理についてはExcelを組み合わせることになりますが、こちらも日常使い程度のスキルで十分です。適性がある人であれば、参考書をひきながら、独学でこなせる程度です。なお、事前にRFMやDBマーケティングの考え方を学んでおくことは必要です。
重要になるのが、この段階での試行錯誤による会社としてノウハウの蓄積です。社内で日々生まれる仮説を検証しながら、「どのような顧客に、どのようなタイミングで、何をすれば効果的なのか?」「売上を伸ばすために必要な施策は何があるのか?」「そのためには、どのようなデータが必要か?」「活用しやすいDB中でのデータ構造?」等を、一つずつ確認していきます。
この後、必要であれば、蓄積されたノウハウをベースに、本格的な分析・プロモーション用のツールの導入を検討すればよいでしょう。いきなりの導入に比べ、成功する確率が何倍にもなります。データの使い方を知っておくことで、将来像や次の成長に向けた戦略も描きやすくなるのです。


重田修治氏
サンテ代表取締役
情報価値総研(IVC)・マーケティングコンサルタント
顧客心理をベースにしたクリエイティブ等のアナログと、データ分析やシステム構築等のデジタルの両側面のことがわかる希少なマーケティング・コンサルタント。
大手シンクタンクで意思決定支援システムの開発から、営業企画、流通分野を対象とするリサーチやコンサルティングまで幅広い業務にたずさわる。
その後、外資系の通信販売会社にてマーケティング部マネージャーとして、販売促進のための売り上げデータ分から、顧客定着、販売促進のためのプロモーションプログラムの開発やロイヤリティプログラムまで担当する。企画開発から実施、運用による改善まで担当することで、コスト削減、売上や利益アップに効果があり、その後の会社の長期的な発展に寄与するマーケティングの仕組みを一通り構築する。
現在は、カタログやWeb等の様々な媒体を通じた通信販売から、メーカーや小売等の商品・サービス提供企業の長期的な発展のための仕組みづくりのサポートに力を入れている。



