前号に引き続き、ミニメイドサービスを例にして集中化・差別化の8つのアプローチ〜1、市場・客層 2、商品 3、価格 4、販売経路 5、地域 6、販促・集客 7、営業・顧客満足 8、理念・事業の定義〜を解説します。
ミニメイドが始めた時間制の家事代行サービスが話題となると、後発参入が相次ぎます。このサービスは参入障壁が低いので誰でも始めることができます。ベンチャー企業や大手上場の清掃業D社も参入してきました。後発参入は、この時点ではミニメイドにとっては追い風です。参入業者が増え、各社が販促活動を行うことで、このサービスの認知が進み、需要が拡大するからです。ただし、大手と同じやり方、サービス品質では資本の論理で早晩、立ち行かなくなることは目に見えています。
ミニメイドは富裕層向けの高品質サービスに徹し、極めていきます。そもそも家庭の清掃は自分でできることを有料で他人に頼むのですから、家庭の主婦ではできないレベルの仕事をして顧客の期待を上回る満足度を得なければならないのです。サービス品質のさらなる向上が重要成功要因です。
ミニメイドはフランチャイズ制です。主婦のキャリアを活かして起業したいという女性をフランチャイジー(加盟店)として集め、育てています。小なりといえども事業主です。仕事に取り組む姿勢はパート、アルバイトとは自ずから異なります。そして徹底的に教育します。開業時や新スタッフには五日間三十時間もの研修が義務づけられています。研修後の修了検定に合格しなければ、この仕事は始められません。一回で合格できる人は50%という厳しいものです(2、7)。
加盟店には高級住宅街の地域テリトリーが分け与えられます。加盟店はテリトリー内を細分化して優先順位づけをし、新聞折り込み、ポスティング、DM、電話など様ざまな手法を駆使して集客活動を行います。重点地域においては、どの同業他社よりも物量を投入します。すぐに仕事につながらなくても、必要性を感じたときに第一番目に思い浮かぶ存在になることを狙っているのです(6、7)。
こうしてミニメイドは富裕層向けの時間制家事代行サービス業者として一番であり続けているのです。一番の地位を確立すると何が起こるのか。他業界からの提携話が一番初めに来るようになります。例えば三越の外商部は自社の大切な顧客をミニメイドに紹介するようになりました。ミニメイドは自社および加盟店が直接顧客を開拓する直接販売方式でしたが、一番を確立した以降は提携先からの紹介も増えてきました。今では直接:間接の販売経路の比率は7:3です(4)。
社長の山田さんはミニメイドを立ち上げる十数年前から清掃業を営んできました。清掃という仕事は身の回りを清める尊い仕事なのに、世の中では必ずしもそう思われていないことを残念に思っていました。清掃の仕事をイキイキとするスタッフがピカピカに輝く会社を作りたいという強い思いを持っていたからこそ、小さな雑誌記事を見た時にコレだ!と閃いたのです。
80年代、女性の社会進出が進みます。家事を代行して差し上げれば、もっと女性は社会に出ていけるはず。あるいは、主婦のキャリアを活かして社会で仕事をしたいという女性も多いはず。女性の社会進出をお手伝いすることと清掃業のイメージを変えることが、この事業の存在意義であると定義したことにより、ミニメイドは根本的な差別化ができたのです(8)。見た目はマネできても、生き様まではマネできません。


福永雅文氏
戦国マーケティング
代表取締役
小が大に勝つ「弱者逆転」を使命とし、我が国の競争戦略のバイブルともいわれるランチェスター戦略を伝道するコンサルタント。販売・マーケティングを指導するコンサルティング活動、企業内研修、講演、公開セミナーを行う。
1963年、広島県呉市生まれ。86年、関西大学社会学部卒。マーケティングの仕事に従事するなか96年、ランチェスター戦略と出会い99年、コンサルタントとして独立。2001年、戦国マーケティング株式会社設立、代表取締役に就任。歴史研究をライフワークとし、毎年、NHK大河ドラマを題材に「ビジネスは歴史ヒーローに学べ」のテーマでも講演・執筆活動を行う。
著書「ランチェスター戦略『弱者逆転』の法則」「ランチェスター戦略『一点突破』の法則」以上、日本実業出版社「ビジネス実戦マンガ『ランチェスター戦略』」PHP研究所
月刊誌ニュートップL(日本実業出版社)で「小よく大を制すビジネス兵法」を連載。
NPOランチェスター協会 理事・研修部長、ランチェスター戦略学会 常任幹事



