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製造業

第314号 要るものしかない職場をキレイな職場という

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所14】要るものしかない職場をキレイな職場という。(9)(44頁)

 2年前の話です。機械加工をしているN社に初めて伺いました。その時に私が呼ばれた理由は直近の数年の経営が思わしくないので何とかしたいということでした。
 
 利益は出ていましたがかなり減っていて、このままだとその年は赤字になるという状況でした。
 
 早速、幹部の皆さんの前で、やるべきことなどを話し合いましたが、残念なことに社長以外の幹部の皆さんからのやる気が感じられませんでした。誰一人としてメモを取らず、何となくダラッとしています。
 
 社長のNさんはかなり焦っているのに大丈夫かな…、と思いながら話を終えて現場に行くことになりました。歩いていると、幹部のひとりが私の横に来て「社長は焦っているように見えますが、いつものことです。会社はそんなに悪くないですよ」と耳打ちされました。
 
 現場に行くと、これはビックリ、とても汚く使わないモノで溢れていました。私は一目見て「これでは良いものは作れないし利益も出せません、今すぐ一緒に5Sをしましょう!」と言いました。
 
 すると、先ほど私に耳打ちした幹部の人が今度は大きな声で、「わが社はこれまでに何度も5Sをやったけど、すべてすぐに元に戻ってしまう失敗しています」と教えてくれました。
 
 そこで、私はこう言いました。
 
 「会社はこれまでだって何とかなって来ているのだから、きっとこれから先も大丈夫と思っておられるようですが、そうだとしたらそれには全く根拠がありません。単なる楽観主義であり、生き残れる理由になっていません。」
 
 「一方、5Sはこれまですべて失敗したということですが、それには根拠があります。みんなで5S活動をした直後から幹部の皆さんで5Sパトロールをして、よくできていたらほめてあげ、少しでも後退していたら指摘するし、もし自分たちだけでできなければ手伝ってもいいから復旧させるといったことをしなかった、幹部の皆さんの無責任が理由です。」
 
 ちょっと言い過ぎたかな…と思いましたが、言ってしまったのでやるしかなくなり、その場で5Sを実行しました。
 
 それまでの5Sは現場任せであったようですが、この時は社長以下幹部全員で職場の人たちと一緒に整理・整頓をしました。経営者も入って整理をすると、不要品になったモノの原因対策をすることができます。
 
 その時は似たような形の製品が、違った部品番号でたくさんあったので、設計変更をして部品統合できたり、買いすぎて余った部品や材料を見てモノの買い方を変えたりと、経営的に大きな変更ができました。
 
 そのおかげで、幹部の皆さんも5Sの本来の意味が分かり、これまでとは全く違う積極的な関与をして下さいました。結果、それまで一回も定着したことがなかったはずの5Sは2年後の今も立派に続いており、ドンドンとレベルアップしています。
 
 先日も現場を見て感心したのですが、本当に要るものしかないのです。作業台の上には、いま作っている製品用の部品と必要な道具しかありません。実にシンプルであり、結果として生産性は高く品質不良もありません。
 
 もっとすごいことに、仕事が終わると作業台も片づけるので、その場所がガランとした空きスペースになってしまいます。空きスペースですから掃除は簡単、モップのひと拭きでいつもピカピカです。本当に要るものしかない職場はキレイです。
 
 ちなみにN社は2年前も黒字経営をすることができました。その後は言うまでもなく好調な経営をしておられます。
 
 

 

 

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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